日本テレビ公式サイト動画「セクシー・ラグビールール」に関する公開質問状送付について(2015年10月5日更新)

2015年8月20日付で日本テレビ公式サイト内「ラグビーワールドカップ イングランド2015」ページに「セクシー・ラグビールール」と称する2本の動画が公開され、その後、同23日付けでこれらの動画は削除されました。インターネット上では、この動画をめぐり元選手やラグビーファンだけでなく、多くの市民から意見が示されましたが、その大半が動画を批判するものでした。

日本では、2019年ラグビー・ワールドカップ、2020年東京オリンピック・パラリンピック大会など国際的なスポーツ大会の開催が予定され、今後ますます、スポーツへの関心が高まると同時に、スポーツがあらゆる人にとって公平・公正で人権侵害のない身体文化であることが求められています。このようなスポーツ文化の醸成には、スポーツを市民に伝えるメディアの力は欠かせない要素であることは言うまでもありません。

こうした社会状況に鑑み、日本スポーツとジェンダー学会は今回の件に関して学術的観点からも検証を行う必要があると考え、(一社)日本体育学会と共同で日本テレビに公開質問状を送付しました。

この公開質問状に対し、回答期日であった2015年9月24日付の回答が日本テレビから届きました。

➡日本テレビからの回答に関する記事を見る

上記回答に対し、日本スポーツとジェンダー学会は受領のお知らせとお礼を送付しました。また、今後どのように検証作業を進めるか等については現在、理事会で審議中です。

公開質問状PDFをダウンロードする

 

<公開質問状および資料全文>

2015年9月7日

日本テレビ放送網株式会社

代表取締役 社長

大久保 好男 殿

 

貴社制作動画「セクシー・ラグビールール」に関する質問状

 

一般社団法人 日本体育学会(会長 阿江通良)

日本スポーツとジェンダー学会(会長 掛水通子)

 

初秋の候、貴社いよいよご清栄のこととお慶び申し上げます。

本年8月20日付けで貴社のホームページ(以下、HP)内「ラグビーワールドカップ イングランド2015」ページに「セクシー・ラグビールール」と称する2本の動画が公開され、その後、同23日付けでこれらの動画は削除されました。

削除にあたり、HPの「お知らせ」欄には以下のように記載されています。

 

−−−−−−−
ラグビーのルールを初心者の方にも分かりやすく解説するべく作成した動画でしたが、 「不快な表現」であるとのご指摘を多数いただいたため、ホームページから削除いたしました。

多くのラグビーファンにご迷惑をおかけし、大変申し訳ありませんでした。
−−−−−−−

 

インターネット上では、この動画をめぐり元選手やラグビーファンだけでなく、多くの市民から意見が示されましたが、その大半が動画を批判するものでした。

日本では、2019年ラグビー・ワールドカップ、2020年東京オリンピック・パラリンピック大会など国際的なスポーツ大会の開催が予定され、今後ますます、スポーツへの関心が高まると同時に、スポーツがあらゆる人にとって公平・公正で人権侵害のない身体文化であることが求められています。このようなスポーツ文化の醸成には、スポーツを市民に伝えるメディアの力は欠かせない要素であることは言うまでもありません。

こうした社会状況に鑑み、日本体育学会、日本スポーツとジェンダー学会は、今回の件に関して学術的観点からも検証を行う必要があると考えております。

なお、今回の質問状の対象としているのは貴社HPに掲載された動画ですが、民間放送局の公式サイトに掲載された動画であるため、放送された番組に準ずるものとして質問内容を作成しております。

 

つきましては、以下の質問にご回答をいただけますよう、お願い申し上げます。なお、本質問状ならびに貴社からのご回答につきましては、上記2学会のホームページ等において公開する予定です。また勝手ながら、貴社からのご回答の期限は2015年9月24日(木)とさせていただきます。

ご多忙中誠に恐れ入りますが、公平で公正なスポーツ文化の育成のためにご協力をよろしくお願いいたします。

 

 

質問1: 2本の当該動画の立案、、制作、、HPへの掲載、、HPからの削除までの経緯に関しての全体像(制作した部局の構成員男女比やラグビー経験等を含む)をお知らせください。

貴社のどのような部局が関わり、動画の内容確認と公開、削除の判断はどのように、誰によってなされたのでしょうか。

 

質問2:公益財団法人日本ラグビーフットボール協会の関与について今回の動画の立案、制作、HPへの掲載、HPからの削除までの経緯に立案、制作、HPへの掲載、HPからの削除までの経緯において、公益財団法人日本ラグビーフットボール協会による内容のチェックや掲載可否の判断等の関与はあったのでしょうか。

 

質問3:貴社ご自身の検証について

貴社は「放送番組審議会」を設置しておられます。今回の動画の適切さについて当該審議会で審議する予定、または、この審議会とは別の方法で一連の経緯に関する検証を行う予定はありますでしょうか。

 

質問4:今後のスポーツ報道の方針について

体育・スポーツ関連学術諸団体は、ラグビー・ワールドカップ2019や2020東京オリンピック・パラリンピック大会を機に、大会のレガシーとして世界に発信できるような、公平・公正なスポーツのあり方や、スポーツの新しい価値を社会に残すことをめざしています。そのためには、報道の力が不可欠と考えています。

これら国際大会の開催にともなって、世界から訪れる多くの人々が接する我が国のスポーツ報道を担う貴社の方針について見解をお知らせください。

 

以上

 

<資料>

○「スポーツ基本法」

http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/kihonhou/attach/1307658.htm

 

前文(抜粋) スポーツは、次代を担う青少年の体力を向上させるとともに、他者を尊重しこれと協同する精神、公正さと規律を尊ぶ態度や克己心を培い、実践的な思考力や判断力を育む等人格の形成に大きな影響を及ぼすものである。

第二条8 スポーツは、スポーツを行う者に対し、不当に差別的取扱いをせず、また、スポーツに関するあらゆる活動を公正かつ適切に実施することを旨として、(中略)スポーツに対する国民の幅広い理解及び支援が得られるよう推進されなければならない。

第七条 国、独立行政法人、地方公共団体、学校、スポーツ団体及び民間事業者その他の関係者は、基本理念の実現を図るため、相互に連携を図りながら協働するよう努めなければならない。

 

○「男女共同参画社会基本法」

http://www.gender.go.jp/about_danjo/law/kihon/9906kihonhou.html

 

第三条 男女共同参画社会の形成は、男女の個人としての尊厳が重んぜられること、男女が性別による差別的取扱いを受けないこと、男女が個人として能力を発揮する機会が確保されることその他の男女の人権が尊重されることを旨として、行われなければならない。

第四条 男女共同参画社会の形成に当たっては、社会における制度又は慣行が、性別による固定的な役割分担等を反映して、男女の社会における活動の選択に対して中立でない影響を及ぼすことにより、男女共同参画社会の形成を阻害する要因となるおそれがあることにかんがみ、社会における制度又は慣行が男女の社会における活動の選択に対して及ぼす影響をできる限り中立なものとするように配慮されなければならない。

第五条 男女共同参画社会の形成は、男女が、社会の対等な構成員として、国若しくは地方公共団体における政策又は民間の団体における方針の立案及び決定に共同して参画する機会が確保されることを旨として、行われなければならない。

第十条 国民は、職域、学校、地域、家庭その他の社会のあらゆる分野において、基本理念にのっとり、男女共同参画社会の形成に寄与するように努めなければならない。

 

○「スポーツ基本計画」第3章「6.ドーピングの防止やスポーツ仲裁等の推進によるスポーツ界の透明性、公平・公正性の向上

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/sports/detail/__icsFiles/afieldfile/2012/04/02/1319359_3_1.pdf

 

スポーツ界の透明性や公平・公正性を向上させることは、誰もが安全かつ公正な環境の下でスポーツに参画できる機会を充実させるための基礎条件である。また、このことは、次代を担う青少年が、スポーツを通じて、他者を尊重しこれと協同する精神、公平さと規律を尊ぶ態度等を培っていくためにも重要である。(以下省略)

 

○「第3次男女共同参画基本計画」第13分野「メディアにおける男女共同参画の推進」

http://www.gender.go.jp/about_danjo/basic_plans/3rd/pdf/3-16.pdf

 

<基本的考え方>

メディアを通じて男女共同参画に関する正しい理解を広め、固定的性別役割分担意識を解消していくため、メディア側も積極的な取組を行うよう働きかける。女性や子どもを専ら性的ないしは暴力行為の対象として捉えたメディアにおける性・暴力表現は、男女共同参画社会の形成を大きく阻害するものであり、女性や子どもに対する人権侵害となるものもある。こうした観点から啓発を行うとともに、メディア側の自主規制等の対策を働きかける。

また、公共性の高い空間やメディアにおける性・暴力表現については、青少年やそのような表現に接することを望まない人の権利を守るため、情報の隔離を適切に行う取組が必要である。(以下省略)

 

○「女性差別撤廃条約」に関する「日本政府第6回報告書」に対する女性差別撤廃委員会の「最終見解」(2009年8月7日) 第29項

http://www.gender.go.jp/whitepaper/h22/zentai/html/shisaku/ss_shiryo_2.html

 

29.(一部省略)委員会は,こうした固定的性別役割分担意識の存続が,特にメディアや教科書,教材に反映されており,これらが教育に関する女性の伝統的な選択に影響を与え,家庭や家事の不平等な責任分担を助長し,ひいては,労働市場における女性の不利な立場や政治的・公的活動や意思決定過程への女性の低い参画をもたらしていることに留意する。さらに,委員会は,固定的性別役割分担意識にとらわれた姿勢が特にメディアに浸透しており,固定的性別役割分担意識に沿った男女の描写が頻繁に行われていることやポルノがメディアでますます浸透していることを懸念する。過剰な女性の性的描写は,女性を性的対象とみなす既存の固定観念を強化し,女児たちの自尊心を低下させ続けている。委員会は,公務員による性差別的な発言が頻繁に起きていること及び女性に対する言葉の暴力を防止し処罰する措置が講じられていないことに懸念を表明する。

 

○「第4回世界女性会議 行動綱領」「第Ⅳ章 戦略目標及び行動」「J.女性とメディア」

http://www.gender.go.jp/international/int_norm/int_4th_kodo/index.html

 

236. 電子,活字,視聴覚などのメディア通信において継続的に写し出されてきた消極的で屈辱的な女性像は,改められなければならない。ほとんどの国の活字及び電子メディアは,変わりゆく世界における女性の多様な生活と社会への寄与についてバランスよく描写していない。しかも,暴力的で屈辱的又はポルノグラフィじみたメディア作品もまた,女性及びその社会参加にマイナスの影響を及ぼしている。女性の伝統的な役割を強化する番組編成も,同様に制限的になりかねない。世界的な消費主義の傾向によって,広告及び広告放送の宣伝文句がしばしば女性を主として消費者として描き,あらゆる年齢の少女及び女性を不適切に標的とする風潮が生まれてきた。

 

○一般社団法人日本民間放送連盟「放送基準」「第11章 性表現」

 

(73) 性に関する事柄は、視聴者に困惑・嫌悪の感じを抱かせないように注意する。

(中略)

(75) 一般作品はもちろんのこと、たとえ芸術作品でも過度に官能的刺激を与えないように注意する。

(中略)

(78) 全裸は原則として取り扱わない。肉体の一部を表現する時は、下品・卑わいの感を与えないように特に注意する。

(79) 出演者の言葉・動作・姿勢・衣装などによって、卑わいな感じを与えないように注意する。

 

○日本テレビ「番組基準」等

「7. 性:性を取り扱う場合は上品かつ穏健に表現し、特に未成年者に悪影響を与えるように取り扱ってはならない。」とあり、さらに

日本テレビ「取材・放送規範」の〈社会的影響力の自覚〉という項目では以下のように書かれています。

放送の社会的影響力を自覚し、品位と節度を保つとともに、視聴者の声には謙虚に耳を傾けなければならない。

一、過度な暴力表現、露骨な性表現は避け、特に、児童、青少年への影響を配慮しなければならない。

一、取材・放送に関する視聴者の問い合わせには、迅速かつ丁寧に対応しなければならない。

一、万一、誤った放送や人権侵害をした場合には、過ちを改めることを恐れてはならない。