JSSGS 学会賞(論文賞)

日本スポーツとジェンダー学会では、スポーツとジェンダーに関する研究の発展を図り、 本会会員の優れた研究成果を表彰するために「学会賞」を設けています。この賞はスポーツとジェンダーに関する研究分野の業績(出版物、論文、報告書、学位 論文〔修士・博士〕等)に授与されます。

【2023年度受賞作】

井谷惠子(京都教育大学)・三上純(大阪大学大学院)・関めぐみ(甲南大学)・井谷聡子(関西大学)「カリキュラムの多層性からみた「体育嫌い」のジェンダー・ポリティクス」スポーツとジェンダー研究第20巻、6-19頁、2022年
三上純(大阪大学大学院)・井谷惠子(京都教育大学)・関めぐみ(甲南大学)・井谷聡子(関西大学)「体育におけるヘゲモニックな男性性の構築:「体育嫌い」の男性の声から」スポーツとジェンダー研究第20巻、20-35頁、2022年

〈選考理由〉
今回、選出された両著作とも同じ研究グループによるものであり、研究方法において共通して注目された点がある。それは、データ収集に用いられたフォーカス・グループ・インタビューの手法であるが、個人を対象としたインタビューにおける個別性が補われる点で優れた取り組みである。
(1)の業績については、グループおよび筆頭著者による、体育科教育のカリキュラムに潜むジェンダー課題の研究の蓄積が背景に位置づいている。本稿では、カリキュラムの多層性に着目した分析枠組みが独創性と説得力に富んでいる。政策的に謳われている体育授業の目指す方向と、学習者によって経験された体育授業が異なることから、「体育嫌い」がカリキュラムの構造によって生み出されている点が明瞭に示された。この研究成果は、体育科教育の現場に通底するジェンダー課題を克服するための研究・実践の両面において、今後ますます重要性を増すものと思われる。
(2)の業績については、男子生徒側から「体育嫌い」を取り扱った点が、注目に値するものである。分析枠組みにコンネルの理論を取り入れ、体育科教育の中で、ヘゲモニックな男性性がいかに支配される側の合意を調達しつつジェンダー再生産の機能を維持しているのか、そのプロセスが明確にされながら論じられている。また、先行研究も十分に検討され、その上でコンネルの理論が適切に援用されている。すべての男性が体育における不平等なジェンダー関係の維持に当事者性を有していることを示した点で、実践的な価値も高い。

【2021年度受賞作】

井谷聡子(関西大学)「〈体育会系女子〉のポリティクス:身体・ジェンダー・セクシュアリティ」(258頁)、2021年、関西大学出版部
水野英莉(流通科学大学)「ただ波に乗る Just Surf サーフィンのエスノグラフィー」(189頁)、2020年、晃洋書房

【2019年度受賞作】

飯田貴子(帝塚山学院大学名誉教授)、熊安貴美江(大阪府立大学)、來田享子(中京大学)「よくわかるスポーツとジェンダー」(213頁)、2018年、ミネルヴァ書房.

【2017年度受賞作】

関めぐみ(大阪府立大学大学院)「スポーツ組織におけるハラスメント問題の社会学的考察-男子大学運動部の『女子マネージャー』に着目して-」、大阪府立大学人間社会学研究科に提出された博士論文(171頁).
掛水通子(東京女子体育大学)「近代スポーツ史における女性の地位-戦前における女子体育教師の出現に関するジェンダーの観点からの考察-」、スポーツとジェンダー研究Vol.14、43−55頁.

【2015年度受賞作】

木村華織(東海学園大学)「日本の女性スポーツ黎明期における女子水泳の組織化─日本水上競技連盟と日本女子水上競技連盟の組織統一に着目して─」スポーツとジェンダー研究第13巻、39-55頁、2015年
小石原美保(国士舘大学)「1920-30年代の少女向け雑誌における『スポーツ少女』の表象とジェンダー規範」スポーツとジェンダー研究第12巻、4-18頁、2014年

【2013年度受賞作】

合場敬子(明治学院大学)「女子プロレスラーの身体とジェンダー―規範的『女らしさ』を超えて ―」明石書店、2013年
井谷聡子著「<新>植民地主義社会におけるオリンピックとプライドハウス」スポ ーツとジェンダー研究第10巻、4-­15頁、2012年

【2011年度受賞作】

松宮智生(国士舘大学大学院)「総合格闘技の女子用ルールに関する一考察―『危険』を理由に禁止される行為の違いに注目して―」スポーツとジェンダー研究8巻、35-47頁、2010年
水野英莉(岐阜医療科学大学)「ライフスタイル・スポーツとジェンダー―日本・アメリカ・オーストラリアにおけるサーフィン選手の経験と女性間の差異―」スポーツとジェンダー研究8巻、4-17頁、2010年