WEリーグの理念と乖離した2024年9月の役員改選に関するJSSGS理事会コメント
WEリーグは、Women Empowerment League の略称であり、女性のエンパワーメントを理念に掲げて設立されました。その規約の目的の一つには、「女性活躍社会を牽引し、女子サッカーやスポーツを通じて、人々が男女関係なく、夢や生き方の多様性にあふれ、一人ひとりが輝く社会の実現・発展に貢献すること」を挙げています。
今回の発表では、第三代チェア(理事長)に初めて男性が就任し、理事9名のうち女性が3名となり、WEリーグの女性役員の割合が大きく後退しました。WEリーグは2021年7月1日に公益社団法人として認定されており、公益性が強く求められる組織として、男女共同参画社会基本法の精神に則ることが必要です。また、女性役員割合を40%以上とすることを定めたスポーツ庁の「スポーツ団体ガバナンスコード<中央競技団体向け>」にも反しています。
WEリーグはこのような役員改正を行う経過で、WEリーグの理念との兼ね合いをどのように議論したのでしょうか。サッカー界のみならず、女性スポーツへの影響の大きさを考えれば、新執行部には、今後どのようにWEリーグを通じて女性のエンパワーメントを促進し、リーダーシップの回復に向けた実効性ある取り組みを行うのかについて、行動計画を策定することが求められます。
この改選に関しては、WomenSport International(WSI)からも声明が出されています。
(本サイトのリンク参照)
声明を発出したWSIは、「スポーツや運動に関わるあらゆるレベルにおいて、女性と少女たちに機会の拡大と前向きな変化を促すこと」を使命とし、最新の研究成果に基づいて活動している国際統括組織です。また、WSIは、国連経済社会理事会の諮問資格を有し、ユネスコ、IOC、その他の主要なスポーツ団体に学術的な視点を含めた助言を行っています。ジェンダー平等の推進を国際社会全体が掲げる中で、日本のスポーツ界もまた常に世界からの厳しいチェックを受けていることを見逃してはならないと考えます。とりわけ、WEリーグの設立は世界からの注目を集めてきました。国内のスポーツ界、スポーツやジェンダーに関わる学術組織は、共に知恵を結集し、今回の事態をより良い方向に転換させる必要に迫られています。
本学会がこれまで蓄積してきた知見にもとづけば、WEリーグの状況を生み出した背景には、日本社会における女性スポーツへのあらゆる面での支援や投資、組織的基盤の脆弱さ、女性リーダー育成支援の不十分さなどがあると考えられます。本学会の理事会は、WSIによる声明の趣旨に賛同するとともに、国内外の女性スポーツをめぐる環境改善を目指し、学術面からさらなる取り組みを進めることを改めて確認します。