田原淳子・芹澤康子
(中京女子大学)
ジェンダーの視点からみた中学校保健体育科教員の性別と運動会(体育祭)の実施種目








 学習指導要領では1989年の改訂で小学校・中学校・高等学校において「男女」の記述がなくなり,制度上の男女差がなくなった.それにもかかわらず,ジェンダー・バイアスが依然として教師と生徒の言動に少なからず影響を及ぼしていると考えられている.本研究は,これを検証するために,中学校体育において,「保健体育科教員の性別」「運動種目における男女の指導の割合」「運動会(体育祭)における男女の実施種目」について,関東から西の4県で調査を実施し,その特徴を明らかにすることを目的とした.研究の方法は,郵送法による質問紙調査で,調査対象は,神奈川県,愛知県,岡山県と広島県のすべての国公立・私立中学校とした.調査時期は,2003年9月から12月であり,有効回答数は計634校(47%)であった.調査の結果,中学校の保健体育科における女性教員の割合は約3割で,指導する運動種目においては,ダンスは女性教員,武道は男性教員が指導する傾向が強くみられた.こうした性別による特徴は,生徒の運動会の種目にも顕著に現れていた.6割以上の学校で,女子生徒・男子生徒に限定した種目が実施されていた.陸上競技種目では,女子種目は男子種目よりも走る距離が短く,団体種目では,女子は「ダンス」,男子は「騎馬戦」と「組体操」というジェンダーを意識した種目が実施されていた.以上のことから,教育現場には依然としてジェンダー・バイアスが根強く残っていることが明らかになった.

キーワード:ジェンダー,中学校,保健体育,教員,運動会(体育祭)


スポーツとジェンダー研究, VOL.3: 18-25, 2005.