スポーツにおける「対等」なジェンダー関係のために
−競艇に見る「スポーツ」と「ジェンダー」−
藤山 新 (東洋大学大学院)
要約
本論文では、身体的な「性差」までも作られたものとして捉える、ポスト構造主義的ジェンダー理論の視点から、原則的に男女混走で競われる競艇という競技を、一部に「対等」なジェンダー関係が形成されている競技の例としてとりあげ、考察を行なう。
男女の混走が実現されている競艇においても、男女の身体上の「性差」を絶対視する言説や、女子リーグ戦がSGレースを頂点とする競艇全体の流れから切り離されている制度、さらには女性選手がレースの本質とは関係のない点でメディアに取り上げられがちなことなどのジェンダー格差が存在しており、結果の公平を担保するような制度的な公平性は確立しておらず、したがって男女の混走という形式上の「対等」関係が必ずしもそのまますべての面で「対等」なジェンダー関係を保証しているわけではない。
スポーツにおける「対等」なジェンダー関係を形成するためには、少なくとも性別を理由にしてその競技への参加に格差がでないようにすることと、競技結果の公平性を保つための制度的な公平性とが保証されることが必要だと考えられる。それぞれの競技者が「男性」「女性」という性別にかかわりなく、ひとりの「競技者」として扱われるようになる、というスポーツにおける「対等」なジェンダー関係をどのように現実化し、制度化していくかという問題は、それぞれの競技に則して考えられなければならない今後の課題だ。
キーワード:男女混走、性差、自然化、対等
スポーツとジェンダー研究,1:15-26,2003.