新聞報道における女性競技者のジェンダー化
―菅原教子から楢崎教子へ―
飯田貴子(帝塚山学院大学)
要約
本研究は、アトランタ五輪、柔道世界選手権、シドニー五輪に出場した楢崎教子選手に関する新聞記事を分析し、新聞報道を通じて、ジェンダー化された女性が構築されるプロセスを明らかにするものである。得られた結果は、次の通りである。
1)楢崎選手の競技能力は常に男性の補助の元に達成できたことを窺わせる表現が用いられており、その男性は、独身時代は父であり、結婚後は夫である。
2)楢崎選手が結婚をした女性であることを報じる表現が、見出しに多く用いられていた。これは、異性愛主義の女性であることをメッセージとして伝達している。
3)楢崎選手に対し、競技達成に加えて妻役割や母役割を期待する記事から、「仕事も家庭も」という女性の新性別役割分担が構築される。
4)このように女性競技者の競技達成を矮小化させる記事は男性の記者によって書かれており、これらの記事を通して、家父長制社会に異議をとなえない女性競技者が構築される。
5)一方、女性記者による記事は、自立した女性として女性競技者を表象している。
キーワード:メディア、ジェンダー、異性愛主義、女性競技者、オリンピック
スポーツとジェンダー研究,1:4-14,2003.