Web Forum 1

改正されたバドミントンのルールを考える


<問題提起>

今回のWeb Forumには、H市で中学校の教員をされているTさんが問題提起をしてくださいました。

 つい最近、バドミントンのルールが改定されることを知りました。国際バドミントン協会が、テレビ放映になじむよう、現行11ないし15点の3セットマッチから7点5セットマッチへの変更を試行していることは以前から知っていました。ところが、「日本教職員バドミントン連盟」のホームページによるとそれが廃案になり、かわって、次のようなルール改定が決定したというのです。
以下はそのコピーです。


(http://www.ne.jp/asahi/badminton/jef/ からのTさんによる引用)
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話題になっていた7ポイント×5ゲーム制は先送りになりました。
(財)日本バドミントン協会のホームページ(掲示板)で、以下の通り報じています。
 5月18日、中国・広州市で開かれたIBF理事会で、7ポイント×5ゲーム制の採択を見送り、同時に、女子ダブルスと混合ダブルスは、女子シングルスと同様に11ポイント×3ゲームで行なわれることになりました。したがって、今年8月以後開催される国際大会では、この制度で行なわれます。国内では、来年(2003年)4月からの採択になりますが、今年度の次の大会に限
り、この制度を先取りして行なわれるそうです。
   2002年日本リーグ   関東大学秋季リーグ戦

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日本バドミントン協会のHPをみましたが(http://www.u-netsurf.ne.jp/nichiba/)、掲示板にはつながらないし、このことには何もふれていません。   
これに関する資料をみる
IBFの公式サイトWorld Badminton Online(http://www.worldbadminton.net/getstory.asp?id=616)に簡単な報告がのっています。  これに関する資料をみる
私が探した限りではBadminton Academy -[バドミントンアカデミー]という個人サイトが一番詳しく報じていました。(http://www.badminton.ac/topic19.html
)  これに関する資料をみる
このサイトには「それにしても、女性が絡む種目は11点というのはあまり意図的なものが感じられず、苦肉の策といった感じがして、あまり納得がいきませんね。」というコメントがありました。

でも、もう決定済みだというのです。

なぜ女子の試合だけが短縮されなければならないのでしょうか?これって、ブライトン宣言に反しますよね。女性差別ですよね。

IBFでは20人の役員で採決したというのですが、その男女比率はどういうものだったのでしょうか。
疑問を持たざるをえません。
どんな議論がなされ、どのような理屈によってこのような決定がなされたのか、知りたいと思います。

長年、バドミントンは女子シングルスのみ11点 他15点でやってきたのです。
私自身、週に1〜2回バドミントンの練習をし、市民大会レベルでバドミントンを競技スポーツとして楽しんでいます。協会のルールがかわってしまったら、わたしたち市民レベルへも影響は必至です。
なぜ、女だけ11点でやめなければならないのでしょう。

また、学校教育の一環としてあるクラブ活動でもバドミントンを指導しています。
そこでも、女子の得点だけが短くなるなんてことをどう説明するのでしょうか。
今まで問題なくやってきてるのに、「女子の体力は男子に比べて劣る」なんていいくるめられませんよね。

でも、また、これがこのまま時間がたてば女子の試合が短いというのはあたりまえになり、「女子の体力は男子に比べて劣る」ということを刷り込む教材になってしまいます。

世界のバドミントン界からすれば、わたしたち市民プレーヤーなんて、ちっぽけな存在です。
でも、いっしょに練習してる同年代の者にこのことを伝えるとこんな反応が返ってきました。

「そんなことしたら、女性差別やってたたかれるって思えヘンのかなぁ」
「実際にやってへんもんばっかりできめてんやろ」
「反対運動してぇや」  などなど・・・。
やっぱりみんな同じ気持ちです。

どうすればこのことについて納得のいく説明がえられるのでしょうか。
抗議するとしたら、どこにすればいいのでしょうか。
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[1] 女性の意思決定権 投稿者:Keiko 投稿日:2002/08/25(Sun) 23:01

「目で見る女性スポーツ白書」(大修館)の競技スポーツの章で、バドミントンのところを見てみましたら、バドミントン協会については、オリンピックでは、選手数が女:男=7:2 に対して、役員はなんと0:4でした。女性の意思が反映される組織構造にはなっていないと考えられる数値だといえるのではないでしょうか。
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[2] 組織の現状と方策 投稿者:淳 投稿日:2002/08/25(Sun) 23:04

ホームページで役員構成について調べましたら、次のような結果でした。
<日本バドミントン協会>
会長:桜内義雄
副会長:綿貫民輔 ほか2名(計3名)
専務理事:1名 男性
理事:19名(内 女性1名)
というわけで、男女比は、23:1(女性の割合4.2%)。政治家をトップに据えた、完全なる男組織ですね。ちなみに唯一の女性は、ナショナルチーム部 副部長という担当で、女性選手のまとめ係といったところでしょうか。

<国際バドミントン連盟:IBF>
会長:男性(タイ)
副会長:7名 すべて男性
カウンシル委員:12名(内 女性2名:ミャンマーとイギリス)
大陸代表:5名 すべて男性
 ということで、男女比は、23:2(8.0%)。連盟役員に日本人は含まれていません。

 IBFには、理事会を含む委員会が7つありますが、理事会には女性が含まれていません。また、今回問題になっている管理/ルール・規則委員会には女性が1名(イギリス)含まれていますが、いずれの委員会も委員長はすべて男性で占められています。
 以上のような組織体制ですので、組織の意思決定に女性選手の意見がどこまで反映されるかは、非常に厳しい状況かもしれません。
 こういう組織が、バドミントンに限らず、山とあるような気がします。どうやって風穴を開けていくのか…。国際組織のルール改正となると、海外の女性スポーツを支援する組織とも連携をとっていく必要があると思います。
 考えられることとしては、まずは、情報や議論をオープンにしていく。女子のルール改正について不満が寄せられたことを国内の主要バドミントン組織に伝えて、注意を喚起する。海外の女性スポーツ支援組織と連絡をとって、この件について話題提供をする。なるべく多くの団体から、IBFに対して抗議する・・・ということになるのでしょうか。
 ただし、その前に、IBF側から、女子の種目が11点制である根拠や決定の経緯について明らかにされなければならないし、ルールの改正を主張する側としても、ただ女子も男子と同じ15点制に並ぶべきだという主張だけでなく、本当に女子にとって、15点制が望ましい客観的理由(たとえば生理学的な)が明確でなければならないと思うのです。
 もともと女子のシングルスが11点制であったということならば、ダブルスや混成だけでなく、女子のシングルスも15点制に変更することや、逆に男子の種目を11点制に変更することも含めて、議論されなければならないと思います。
 そうなってくると、とても難しい。ルールの問題は、ただ男女が同じになることを目指すだけでは、根本的なジェンダーの問題の解決にはならないと思います。
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[3] 生理学的根拠の「?」 投稿者:Takao 投稿日:2002/08/25(Sun) 23:06

 競技種目の男女差などに生理学的根拠があるはずがなく、女性に11点制(バドミントン)、3セットマッチ(テニス)等などを採用するのは、つまらない試合に時間をかけたくないという素朴な理由だと思います。仮に、正当な根拠があるのかを尋ねたら、それなりの返答をしてくると思いますが、前近代的な「女性が激しい運動をすると、母体機能が損なわれる」程度の答えだと予想されます。テニスは、女子シングル・女子ダブルス・混合ダブルスともに3セットマッチなので右へ習えをしたのではないでしょうか。確か男子ダブルスも3セットマッチです。男子ダブルスが何故5セットマッチでないかを考えれば、体力の問題でないことは明らかです。即ち、男子ダブルスも正当なテニスからは逸脱したテニスであって、5セットマッチをする価値があるのは男子シングルスのみ、というのが本音だと思います。
 古今東西、人は生理学的根拠に何故か弱いのですが、そういう生理学的・解剖学的理由に疑いの目が向けられジェンダーの発見につながった。そうして今や、ジェンダースタディーズでは覆い切れない問題が浮上して来ています。人の性には、セックス・ジェンダー・セクシュアリティの三様があり、それぞれに男女だけで説明できない多様な性があり、その性もまた時とともに変容する可能性もあるわけです常に、人は男と女で構成されているという二元論的思考から解放されることが、私たちにとっての優先課題のように思います。
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[4] 競技規則の変更が通知されたようです。 投稿者:H市のT 投稿日:2002/10/20(Sun) 13:42

 日本バドミントン協会からは何の一般広報もないままですが、日本教職員バドミントン連盟のHPでは以下のような情報が提供されています。
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 平成15年4月1日より、女子ダブルスと混合ダブルスの各ゲームにおいて勝者となる得点が女子シングルスと同じ11点になります。その新スコアリングシステムに対応する競技規則書変更箇所が以下のように示されました。

【競技規則】
第7条 スコア
 第1項 マッチ(試合)は、特に定めなければ2ゲーム先取の3ゲームで行う。
 第2項 男子シングルスと男子ダブルスでは、15点を先取したサイドがそのゲームの勝者なる。(第5項の場合を除く)
 第3項 女子シングルスと女子ダブルス、そして混合ダブルスでは、11点を先取したサイドがそのゲームでの勝者となる。(第5項の場合を除く)
****以下省略******

 IBFでは今夏より4年間このルールで行くことを決定しているそうです。このまま何の説明もされないまま、なし崩し的にルールが変わってしまうのかと思うとたまりません。4月はもうすぐです。春の大会から私たちの地域の市民大会のルールさえ変わってしまう可能性があります。いくつかの団体やバドミントン関係の方々に直接訴えたり、質問のメールを送ったりしています。ある団体関係の方からは、「これはスポーツ関係ではなく、人権関係のところに訴えた方がいいんじゃないか」とアドバイスを頂きました。
 10年ほど前に日本バドミントン協会が女子にスコート着用を強制した時のように、もっと、世間にひろくこのことを知ってもらって議論の輪を大きくしていく必要を感じます。ここへの書き込みも8月以降増えていないので・・・・。
 スポーツにおける男女平等と逆行するこの動き、なんとかとめられないでしょうか。どう動けばいいのかご意見をお願いします。
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[5] 訂正:「セット」ではなく「ゲーム」です。 投稿者:H市のT 投稿日:2002/11/02(Sat) 16:54

 私の問題提起を知ってもらおうといろんな所にメールを送ったり、このフォーラムの紹介をしたりしています。いくつか返事を頂いていますので、きちんとまとめてここでの議論の材料に紹介していきたいと思っています。
 そのなかで、わたしの最初の問題提起の文章に間違いがあると指摘を受けました。バドミントンには「セット」という用語がなく、すべて「ゲーム」というのだそうです。そういえばそうです。「バドミントン」が「バトミントン」と書かれたりしたら「ドです!」なんてむきになって言いがちな私たちです。きちんと用語を使っていかなくてはと反省しました。ここでお詫びして訂正させて下さい。「○セットマッチ」とは言いません。「○ゲーム」というのが正しいのです。申し訳ありません。
 そして、できればこのことはご容赦の上、ルール改定問題でのご意見をお願いいたします。
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[8] バドミントン・マガジンがとりあげてくれました 投稿者:H市のT 投稿日:2003/01/21(Tue) 21:47

 ベースボール・マガジン社発行の日本で唯一?のバドミントン専門誌、バドミントン・マガジンの2003年2月号にこの問題について次のような記事が掲載されました(78ページ「ワールドニュース クリッピング」のコーナー下段)。

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新スコアリング制度は女性差別?   From CANADA
 2002年の暮れ、全国紙にロンドン発ロイターによる外電が掲載された。「新得点制度は女性差別」提訴―――との見出しで、2002年からIBFが導入した得点制度をカナダなど5協会が女性差別だとして訴えたことを報じている。
 IBFが1年にわたる7×5ゲーム制の試験採用を経て、2002年5月、理事会においてつぎの決定を下した。男子単複は15点3ゲーム、女子単複と混合複は11点3ゲームで行う―――。競技のおもしろさをよりアピールし、テレビがコマーシャルタイムを入れやすいようにと、考えられた7点制。しかしアジア勢の反対にあい、最後はヨーロッパ、アジアを中心とする国々の折衷案として、新たな結論が導き出された形だった。
 ロイターによればこれに対して今回、カナダをはじめイングランド、スコットランド、オーストラリア、ニュージーランドのバドミントン協会がスポーツ仲裁裁判所(CAS)に訴えを起こした。IBFは以後、理事会でこの得点制を再考したが、変更することはなかったという。カナダ協会側は主張する。「唐突になされた決定に正当性があるとは思えない。理事会の決定は結果的には西洋的解釈でいう女性差別にあたっている」。
この得点制は国際大会で8月から実施され、日本では関東大学秋季リーグと日本リーグですでに採用。2003年4月からは正式ルールとして取り入れられる。
 昨年5月のIBF理事会で決まった新ルール。それまでの1年で、多くの選手は7点制、9点制を新方式として好んでいただけに、まったく新たに提案されたルールには首をひねる者も多かった。そして、今回の提訴である(ちなみにイングランド協会は当初全種目9点5ゲーム制を提案していた)。
 女子選手のからんだ種目のみ11点。この理由は確かに説明されていない。試合時間の短縮がテーマであるバドミントン界にとって、男子に比べて女子種目はラリーが長くなりやすく、試合時間が伸びる印象があるためなのか・・・・・。今後の動きが注目される。
 日本では一連の出来事に「日本スポーツとジェンダー研究会」が強い関心を示している。

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 以上、全文です。なかなかうれしい記事でした。
   「全く新たに提案されたルールには首をひねる者も多かった。」
   「女子選手のからんだ種目のみ11点。この理由は確かに説明されていない」
   「今後の動きが注目される」・・・等。
 ルール改定問題に関心を寄せ、提訴の行方に注目している人達が国内のバドミントン界にもいるという事がとてもうれしいです。また、私たちのこの研究会も注目されてaC5カ国のCASへの提訴についてカナダなど5協会がおこなったCASへの提訴についての情報をWEBで見つけました。原文はここにありますので確認して下さい。→  http://in.sports.yahoo.com/021224/137/1zglv.html
 辞書を片手に読んでみました。おおよそ次のような内容だろうと思われます。英語は得意ではありませんので間違っていたらご指摘下さい。また、下から2段落目(The council is・・・)で結構重要なことを述べていそうなのに、分かりませんでした。どなたか、ご教授下さい。
 ○ 5カ国というのはカナダの他、イングランド、スコットランド、オーストラリア、ニュージーランド。
 ○ カナダのオリンピック委員会はこの抗議行動に資金を提供している。
 ○ IBFは先月異議申し立てを受け、バンコックにおける評議会で再考を行った。
 ○ しかし、7点制に取って代わるものとして採用したこの制度を変更することは拒絶した。
 ○ ヨーロッパバドミントン連盟は、この得点制は「女性のゲームへの攻撃だ」と述べている。
 ○ CASへの抗議は、加盟国への提案無しに新ルールを押しつけるIBFの合法性を問うものだ。
 ○ カナダバドミントン協会の最高責任者であるイアン・モスさんは「われわれは唐突になされたこの決定に正当性があるとはとうてい考えられない」と言った。
 ○ もしこの抗議が成功したら5カ国は裁判所の裁定という権威を用いてIBFに対して道義的な圧力をかけるだろう。

 また、CASは裁定迅速をモットーとする一審のみで、提訴から24時間以内に結論をだすシステムだそうです。ですから、もうCASの裁定はくだっているはず・・・。さて、どうなっているのでしょうか。情報を入手されたら教えて下さい。

2.国内での反応
(1)10月20日
 日本バドミントン協会(NBA)HPにある公式アドレスに質問のメールを送り、新得点制導入について何の説明もないので次の3点を教えて下さいとお願いしました。
 @なぜ女子の試合だけが11点に短縮されるのかという理由
 A5月のIBFの新得点制導入の決定についてどのような意見だったのか。
 BIBFからも納得のいく説明がなされたのか。

(2)10月20日
 日本教職員バドミントン連盟(JEF)の理事の方々へ直接メールを送り、「なぜ女子の試合だけが11点に短縮されるのかという理由説明をきちんとしてもらえるようIBFならびに日本バドミントン協会にとりついでほしい。」ということをお願いしました。

(3)いくつかのバドミントン関係の掲示板やサイト運営者にこの問題をメールでアピールしたり、学校体育バドミントン関係者に直接訴えたりしました。

(4)JEFの理事のおひとりより、即日返信が来ました。以後数回、メールのやりとりをしました。JEFよりNBAへ出ておられる方もいらして、私の質問を取り次ぎ非常に誠意のある対応をして下さいました。その結果としては、
 @NBAとしての公式の説明はされなかった。(今もない)
 ANBA競技審判部長の談話あるいはJEF理事長からのメールとして以下の内容が伝えられた。
 「国際大会における女子複、混合複の試合で、だらだらした試合が多く、観衆に不評判であったからだと聞いている。」
 「女子の種目は男子に比べてラリーが長引く傾向にある。シャトルのスピードも遅く、体の動きもスピード感に欠けたところがある。観客は男子の試合をより楽しみにしている。」
「全体として冗長なので、メディアが取り上げにくい。現行ルール継続となったときに折衷案のような形で出てきたようだ」

<感想>
 「・・・・と聞いている」等という表現にみられるように、NBAの役員でさえきちんとした説明を受けていないと思われました。ですから客観的データに基づく説明がされるはずもなく、理事自身の女子ゲームについての感じ方を結論と結びつけて、「たぶんこういう理由だろう」と推測して述べられているだけのように感じました。

(5)その他の反応もほぼ同様なものでした。つまり
  @「女性が体力的に劣っているから11点にした方がいいとは思いませんし、大体が体力的に劣るというとについて何を持って体力的に劣ると言うのか全く理解できません。」などと一応は体力差説は否定の立場をとる。
  Aしかし「女子の試合は見ていて何がすごくて長いラリーになるのかということを考えているうちに、飽きてきてしまう。出来ればさっさと勝負を決めてくれよ…と思いつつ、男子のスリリングな試合を心待ちにしていた」などと、おもしろいのは男子の試合ということが述べられる。
<感想>
 言いたい放題言われていると感じます。返答をくれるのはほとんどが男性である(WEBの利用が男性に偏っていること、バドミントン界も役員・指導者のレベルでは男性がほとんどであることが影響していると思われる)こともあり、「スピードがない」「だらだらしている」「迫力がない」「おもしろくない」と繰り返し言われ、かなり傷つき落ち込みました。
 日頃から彼らが女子ゲームに抱いていた感情が、IBFの決定により強化され勇気づけられ堂々と述べやすいのだろうと思います。女子の試合が長いというのが客観的公平な事実ではなくても、ルール改定という事実は、ほんの一例にすぎないことでもその決定の理由づけに一般化して語られてしまっています。否定的情報は忘れられてしまいます。

(6)JEFの方より「折衷案」の解説として「バドミントン・マガジン7月号42ページ」を参照するようにとのアドバイスを頂きましたので早速取り寄せて読んでみました。要旨を以下に紹介します。
@タイトル「ルール問題に決着 15点3ゲーム制を続行」
Aもともと試合時間の長さが問題になったのは90年アジア大会の団体戦で午前0時を越えたという事件がきっかけである。93年世界選手権の男子シングルスを観戦したIOCサマランチ前会長が「もっと短くして観客を楽しませる工夫をすべきだ」と述べたことで7点5ゲーム制の検討がはじまった。
B5/12の年次総会(110カ国141名)で5×7点制に決着が付かず、その場でイングランドより5×9点制、デンマークより女子単のみ5×7,他5×9点制の折衷案が提案され、5/18の理事会で決定ということになった。
C5/18の理事会では(理事24名中20名が出席)その席上で新たに「男子現行通り、女子・混3×11点制」という案が出され、それとデンマーク案との争いとなり、ねばって勝つタイプのアジア勢が数で勝り、前者を選んで決着が付いた。
<感想>
一読して、開いた口がふさがらない状態でした。7点5ゲーム制がどのような趣旨で検討されだしたか、どのような思惑があって揺れ動いてきたか、それが実現せずどれほどたくさんの人が嘆いたか、は書かれていますが、その中で、女子の種目だけが11点に短縮されたことについては数行その事実が書かれているだけで他は全く触れられていません。結局変わったのは女子の得点制であるのに、その大きな変更、改革についてなんらコメントせず、ページの大見出しに「15点3ゲーム制を続行」とあるのです。7点5ゲーム制の不採用よりも現行ルールの変更が決定したことの方が重大ではないでしょうか。まるで、「女子のゲームはバドミントンにあらず」的扱いと感じるのはわたしのひがみでしょうか。
 さらに、これによって明らかになったのは、要旨Aで述べたように、「だらだら」と長くて飽きてくることが問題とされたのは男子シングルスだったという事実です。(90年アジア大会の午前0時を越えた決勝が女子だったのか男子だったのかは不明ですが)少なくとも特別に女子の試合時間の長さが問題とされて出た結論では無いということは明らかです。にもかかわらず、理事会でいきなり(!)女子のみのゲーム短縮が提案され決議されたのです。
 どうしても15点制を残したい勢力によって、女子ゲームの4点が差し出された(見捨てられた)とみるのはゆがんでいるでしょうか。
 また、このように重大な決定が、加盟110カ国中たった20名の理事しかいない場でいきなり提案、議決されたという事実にも驚きます。この決定の重大さに理事もこの記事の筆者も全く気付いていないのです。加えて言うならば、この問題に口を閉じている日本バドミントン協会の方々も。
 付け加えてこの号にはもう1つ、得点制に絡む記事が掲載されています。81ページのリレーコラム「ルール改定をめぐって  本質とアピールと」(筆者:スポーツライター 楊順行)です。ここでも7点制が見送られたということばかりがコメントされています。マレーシアでは日本の野球なみにバドミントンがテレビ中継されているなどという話は楽しいですが、どうして女子のルール改定に目をつぶって記事が書けるのだろうと疑問に思わざるを得ません。

(7)その他
@11/12深夜の全日本総合選手権のNHKによるテレビ放映が男子の試合だけでした。NHKにメールで質問したところ、゛男子ダブルスが注目されていたのでNBAと相談の上そうした″、との事でした。日本のバドミントン人口は女性の方が多い。そして、世界ランキングも女子の方が上です。この直後に行われたアジア選手権大会でも、上位ベスト8に入ったのは女子とミックスでした。それなのに、男子の試合だけ放映してしまうのはなぜなのでしょうか。(もちろんランキングが男子の方が上位であろうともスポーツの楽しみは男女平等のはずです。)女子シングルスでは優勝候補選手が次々と破れたあとに勝ち上がってきた若手選手の闘いぶりを楽しみにテレビをつける視聴者もいるのに、です。男子のようなジャンピングスマッシュや素早い攻防は、すごいと思う反面私たちの実戦とはかけ離れているので「飽きてきます」。女子選手が、長いラリーからある一瞬に攻撃に転じるという「すごい」闘いを見たいと私は思っています。視聴者としても、女性はあまり考慮されていないと感じる出来事でした。
*余談ですが・・・・試合での戦いぶりが放映されないのにもかかわらず、コメディアンと女性アスリート達との恋愛トークショーという感じの某バラエティ番組にはさっそく彼女が出演者として起用されていました。女性アスリートにメディアが期待するものが何であるのかをかいま見る思いでした。
A12/15(日)に大阪新スポーツ連盟バドミントン協会主催の試合に出場しました。その際、日本バドミントン協会の競技規則にのっとって試合を行う、としながら、女子ダブルスおよびミックスダブルスについては「来年度の資料とするために」と、11点3ゲーム制でおこなうとされました。女性たちの多くは不満に思いながらも従いました。
すでにこのように「無批判」に新制度の先取りがされています。
B私がもう一つ身近な問題だと思っているのは、所属する中体連の試合において、その得点制がどうなるかということです。いつも、時間短縮のため、ダブルスは21点1ゲームに、シングルスは15点1ゲームにて実施しています。この通例で行くと、ダブルスも今後は15点1ゲームに短縮とすべきだという意見がでるのではないか。そうあやぶんでいるわけです。顧問会でこれが提案されたらどう反論しようかとずっと考えていましたが、今回のカナダなどのCASへの訴えで勇気がでました。女子からゲームを楽しむ時間をうばわないでほしい。・・・この素朴な願いは個人的感情ではないんだという確信が得られました。やっぱり、女子の試合だけが短くされるのは女性差別です。

3.もっとアピールをしましょう
 女性スポーツへの軽視、蔑視は一朝一夕には変革できませんが、このような突出した事象について問題提起し社会的にアピールすることはその状況を少しでも好転させることにつながるのではないでしょうか。今、5カ国のCASへの提訴という世界的な動きがあります。これに便乗し、日本でももっと大きく注目されるような行動をしていきましょう。私はまずこの意見・情報を各新聞社に送ります。みなさんどうかご意見をお願いいたします。
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[9] 日バの掲示板にIBF臨時総会について書き込みしました 投稿者:H市のT 投稿日:2003/03/22(Sat) 11:53

 復活された日本バドミントン協会の掲示板に本日、以下のような書き込みをしました。
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 協会の皆様に取り急ぎ、教えて頂きたいことがあります。
 あるサイトで、近々国際バドミントン連盟の臨時総会が開かれるという情報を得ました。昨年、女子にかかわる得点制がすべて11点3ゲーム制に変更となった経緯について、カナダ協会やイングランド協会などがこれを「女性差別だ」としてスポーツ仲裁裁判所に提訴し、その訴えに連盟加盟の6分の1以上の協会が賛同し、この3月から4月にかけて臨時総会が開かれることになったというものです。(時期についての確定的な情報は得ていません)
 ルール変更問題では、国際レベルのみならず、一般の市民・学校レベルまで多くが影響を受けます。「なぜ?」という疑問を封印したままの競技規則の変更はその後のバドミントンの競技としての発展に影を落としかねません。ですから今回の臨時総会での再審議は民主的な当然の手続きとして注目していました。
 この臨時総会について、貴協会としても本サイトを通じて一般の愛好者にアナウンスメントして頂けないでしょうか。バドミントンを心ゆくまで楽しみたい、そしてその楽しさを広げたいと願う者のひとりとして心配でたまらないのです。
 臨時総会が開かれるに至った経緯や、何が論点になるのか、貴協会はどのようなお立場でその臨時総会に臨まれるのかといったことについて教えて頂きたいのです。ぜひ情報公開をお願いいたします。以上
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情報を得たサイトというのは以下のものです。
http://allabout.co.jp/sports/badminton/subject/msubsub_konngo.htm?NLV=NL000043-94
ここから臨時総会についてのIBFの情報が読めます。我がサイトも紹介されています。その他「インド Yahoo! SORTS 」にも書かれているそうです。
http://in.search.yahoo.com/search/news_in?p=badminton
(が、わたしには見つけられませんでした。)
この情報は2ヶ月くらい前から知っていたのですが、なかなかここに戻って来れなくて、情報のUPを怠っていました。7月の研究会では経過をまとめて報告できるようにがんばります。(英語も頑張って読まないと!)ご協力お願い致します。
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[10] IBF臨時総会 元の得点制採択を決定! 投稿者:H市のT 投稿日:2003/03/24(Mon) 01:13

 どうなっているんだろう?とたまらず書いたその日に、まさに総会が開かれていました! 驚きました。
 結果については宮本キミコさんがメールマガジンと掲示板へのレスで教えて下さいました。日本バドミントン協会理事の広報部副部長の石田純さんもこの臨時総会の議題等について情報を提供して下さってました。
 結果は、もちろん元のルールに戻るというものです。うれしいです。でも、すぐさま次の疑問がわいてきます。その情報によりますと、今回の臨時総会では女子のみ11点3ゲーム制というのは案の1つとしても入っていなかったもようです。この得点制はすでに臨時総会が開かれる以前に「廃案」が決定していたと解釈するしかありません。・・・その理由は何なのでしょうか。スポーツ仲裁裁判所の裁定によるものなのでしょうか。では、どのような裁定が下されていたのでしょうか。
 そしてこのことについて、日本協会は今後どのような対応をしていくのでしょう。というのは、昨年末、スポーツ仲裁裁判所にカナダ協会等が提訴した際に私は協会に見解をもとめました。その時には、新得点制について「とりたてて女性差別の論拠たるには至らない。信念を以てIBFの決定を尊重し、これを遵守する方針」であるとFAXで回答をもらいました(03年1月15日)。この「信念」は今、どうなっているのでしょう・・・。なんだか、ちょっと意地悪でしょうか・・・?
 日本協会では4月12日に理事会を開き、元の得点制の採用時期等を決めるそうです。(昨年の段階で、女子だけを短縮するルールの採用時期を日本ではこの4月からと決定していた。)そこで、次の要望をまた今日書き込みました。
 「4月12日以後、理事会の決定をご報告下さるときには、ルールの適用時期だけでなく、このおよそ1年間のルール問題をめぐる「混乱」についての貴協会としてのコメントも公表して頂けますようにおねがいします。結論だけでなく、なぜそうなったのか、という理由や協会としての見解も説明して頂きたいのです。どうかよろしくお願い致します。」・・・と。
 わたしは、カナダ・イングランド等の主張は、昨年の新得点制の決定は「女性差別」であることと加盟国に提案すらされなかった「突然の」非民主的なものだったという2点での批判であったと理解しています。そして、経過からすればその主張が受け容れられたわけです。世界のルールはもう一度昨年5月の段階に戻り、そこから再度、発展への方向性を探るという地点に立つこととなったわけです。再スタート。私はそのように理解しています。
 そして、再スタートの際には、この1年間の混乱の中からIBFは何を学んだのかが明らかにされなければならないのではないでしょうか。
 様々な問題が複雑に絡み合っているのでしょうが、最も重要なことは、スポーツにおける男女平等や、女性のエンパワメント等の課題とバドミントンも切り離しては存在し得ないということだと私はおもいます。
諸外国の協会の方々ががんばってその原則を貫いてくれた。差別的・非民主的な決定は無効だとする理性が、世界にはあるのだということがとてもうれしい。この世界の動きをもっとつぶさに知りたいです。英語で、カナダ協会やイングランド協会、CASに質問したらいいのかな?どなたか、協力していただけませんか?
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[11] 日本教職員バドミントン連盟サイトへ! 投稿者:H市のT 投稿日:2003/04/26(Sat) 12:53

 すったもんだの末、バドミントンのルールは元に戻りました。
 国内ルールも昨年9月に「4月1日からは新ルール」と決定していたのですが、3月末に日本協会から緊急通達が出され現行ルールのままとされました。結局、国内では正式には1日もあの女子のみ短縮ゲームは実施されませんでした。
 この間の経緯について、日本教職員バドミントン連盟が関心を寄せて報じてくれています。日本協会からの通達なども、全文を公開してくれているので日本協会のサイトよりもよくわかります。
そして、今回、私のメールでの質問やその後のやりとりなどを紹介するページが公開されました。生のメール文が公開されて気恥ずかしいのですが、男女共同参画という社会の流れやジェンダーフリー教育の活動にもふれ、私のこういう活動を心強くおもったという紹介の仕方をして下さっているので、恥ずかしさはおいといて、公開の了解をしました。アドレスは
 http://www.ne.jp/asahi/badminton/jef/index.htm
です。これはトップページです。ここから、「11.7 スコアリングシステムが従来に戻った背景について 」に進んで下さい。
 どうかご感想を担当者龍井昇治さんとこのコーナーにお願いします。




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